風邪の子供さんのおかあさんの質問の第一は「お風呂に入れていいですか?」です。
お風呂については医学的に大規模な疫学的調査がなされていないので定説はありません。色々なお医者さんがそれぞれの個人的な経験や考えに基づいて指導を行っています。「熱い湯にさっと入りなさい」「風呂に入って汗をかけば風邪は治る」「絶対入るな」等、先生によって千差万別です。
それでは私の個人的な指導をお話ししましょう。
まず冬のお風呂の入り方です。昔の日本では自宅に風呂がある家は少なく、暖房も十分でなかったので家中たいへん寒かった。その当時は風呂屋で汗をかくほど暖まり、寒い道をいそいで家に帰って冷えないうちに布団にはいるのが正しい風呂の入り方でした。これはかなり体力を消耗します。「絶対風呂に入るな」という指導はこの頃のものでしょう。
しかし現在日本人の生活は一変し、ほとんどの家に風呂があります。昔の経験はもう正しくないのです。
顔が真っ赤になるまで熱い湯に入るのは激しい運動をするのと同様に体力を消耗します。汗をかくということは、体温が上がりすぎたために体温を下げようと体が反応しているのです。長く湯につかっていれば、水圧が肺にかかり呼吸機能を障害し、全身の静脈に圧がかかるため心臓にも負担をかけます。
私は病気の時は安静が一番と考えていますので、風呂場を十分暖めておいて人肌程度のシャワーで体をてきぱきと洗い、よく拭いて、暖かくした寝室でさっさと寝る事をお勧めします。風呂から出たとき汗をかいているようでは暖めすぎです。暖めぬように、冷やさぬように! 浴槽に入るのはなるべく避けた方が良いでしょう。シャンプーはできるだけ避けて、もしどうしても頭がかゆければて時間をかけずにテキパキと洗ってすぐ乾かして下さい。
なにも夜、風呂に入る必然性はありません。昼間にシャワーを浴びれば体が冷えにくいので風邪の子供にはベストでしょう。風呂とシャンプーを別々にするのも良いですね。
夏の風呂も同様です。暖めぬように、冷やさぬように! 今度はクーラーの使い方がむつかしい。風呂上がりの子供をクーラーで冷やしすぎの部屋に寝かすのは非常識ですが、クーラーは体に悪いと暑い部屋で汗だらけで寝かすのも考えものです。ほどほどにお願いします。