院長ご挨拶に加筆して独立させました(H.12.5.7)

IT革命

               宝塚市 金川 清人

 世はIT(Information Technology)革命だそうです。電話や郵便でなくインターネットで商取引する事や、中間流通業者を省くことがIT革命であると勘違いしている人が多いようです。IT革命は新しい文化です。みんなにインターネット上で情報が公開され、自分で判断し、平等にアクセスできる事が「革命」なのです。「東芝事件」では一市民のクレームに対し東芝が横柄な対応をとったと訴えた個人のHPに何百万人もの人々がアクセスした事により、世界企業が白旗を上げました。「東芝事件」はネットの上では個人と世界企業が対等である事を証明し、日本のIT革命の幕開けを告げるファンファーレとなったのです。日本の役所や大企業に代表される縦型のピラミッド社会が崩壊し、新入社員も社長もメーリングリストの中で対等に議論するフラットなシステムが立ち上がろうとしているのです。中間流通業者や中間管理職が省かれ、小回りが利くが緩衝剤のない新しい社会が来ます。これがIT革命です。誤解を恐れずに言えば、全ての関係があたかも1対1の関係のようになってしまう技術がITだと私は考えています。だから、メール友達は会った事がなくても、すごく親近感を感じます。自分のハードディスクの中にいつまでも彼の(彼女の)メールが保存されているのですから。(メール喧嘩も当然激論になります。)

 

 対等な議論の前提は情報の開示です。同等の情報を持たなければ対等の議論は出来ません。私は地方自治体の某審議会の委員を経験しました。審議会では情報を独占している行政に対して各委員が「あのデータを出せ、この状況を説明しろ」という指示をして、それに対応して行政側が走り回り、データが出てくれば行政に対して要望を述べる、、、そんなパターンです。委員同士の議論はわずかでした。きっと国の多くの審議会もこんなもんだと思いました。

 

 医療に関しても、医者が患者に「治してやるから黙って俺について来い」という時代は過ぎました。医者が患者に様々な選択肢を示して、本人にとって最良(客観的に最良とは限らない)の治療計画を両者が合意の上で進める時代でしょう。例えば手術をすれば治癒の可能性が高くても、本人が手術を希望しなければ次善の策を考えねばなりません。某宗教の信者さんは輸血を拒否されます。ならば輸血を断念した上で、出来るだけの方策を提案するのが医者の勤めになりました。昔のように医者が「私が最良と信ずる治療がいやなら他へ行ってくれ」と言うのは、患者主体の時代にあわないのです。

 かつて主治医は患者についての医療情報を独占していました。患者は任せるしか他になかったのです。今インフォームド・コンセントとかいって、患者に説明し同意を得る義務が医者に課せられています。しかし患者が主治医から以外の情報を持たないと、治療計画に関して主治医に反論する事は極めて困難です。セカンド・オピニオン(患者が他の医師の意見を聞いてみる事)は今後重要性を増して行くでしょう。当院でも他医から「この患者さんにセカンド・オピニオンを聞かせてやって欲しい」との紹介状を持ってくる患者さんが増えてきています。そのように紹介する先生は全員極めて患者さんについてよく考えた治療計画を書いておられます。こちらもできるだけの説明をしますと、患者さんは主治医に遠慮して聞けなかった事まで聞けて良かったと言って、主治医の所に帰っていかれます。

 

 最近は当院を受診される患者さんもインターネットで予備知識をつけて来られる方が増えています。そのためにもネット上に素人にもわかりやすい医学情報を豊富に無料で(!)載せておく必要があります。最近私も忙しくて自分のホームページの病気の説明の欄を更新していません。反省してぼちぼちやっていきたいと思います。