国民会計検査院ニュースNo.3  1997年7月1日

7月18日現地視察

大島波浮港避難岸壁

 

行政のムダを見る

   計画の杜撰さ

   施設の利用状況

●7月18日(金)〜20日(日)(船中一泊、民宿一泊)

●参加費26,000円(船賃9,520・民宿9,500・食事3食3,600・到着休憩1,800・その他)

●集合場所  東京竹柴桟橋 22:10集合 この間手続き 23:00出航

       JR浜松町駅下車(新橋寄り出口)徒歩8分

●申し込みは7月5日まで。(fax03-3264-4192)又は郵送で

参加者には日程表を後日発送

 

 大島在住の会員佐々木さんより手紙をいただきました。去る10年前、大島の三原山噴火のことは皆さんもご存じだと思います。そのとき災害復旧事業として波浮港に緊急避難岸壁が作られたとのことです。総予算はl 00億近くもかかり工事は完了したそうですが、ここも他の公共事業と同じく、地元の意向と関係なく、むしろ無視して工事が計画され、実行されました。(東京のコンサルタントが入り、机上の理論の計画)

 なぜ波浮港にといいますのは、島には島特有の気候状況があります。波浮港の反対側(岡田港)がしけますと、船は接岸できません。それで反対側の波浮港に造るわけです。

 緊急時はどちらかに接岸せずには救出ができません、それで予算が付きましたのですが、地元の意向も聞かない、(潮流のことを無視していたために)、今日接岸しようとしても接岸できないのが現状だそうです。できて数年経つのですが、一度も使用されていないとのことです。地元は、大型船の着岸をしたいのですが、波の問題で出来ないとのことです。

 事業管轄は東京都港湾局なので陳情していますが埒があきません。また高潮に襲われると現在人が住んでいる地帯が水没の危険があるとのことです。

 国税を使って工事が行われ、使用不可能とあれば、現地視察をして解決できる攻策提言ができるようにする事が当国民会計検査院の設立目的です。是非皆さんも参加下さい。お待ちしています。

 
特殊法人職員へのアンケート(質問50問)

回答300通も

 

●ほとんどいない女子管理者

 前回の国民会計検査院ニュースでお知らせした、特殊法人職員アンケートの集計が終わりました。発送総数3345通。事務局に返送されてきた回答は303通。内2通は白紙、1通は締め切り後到着。最終的な集計は300通です。

 まず、回答者の性別は圧倒的に男性が多く、女性はわずか4人でした。発送のため名簿を整理していて気づいたのですが、アンケート対象者には女性の中間管理職が極端に少なかったです。それを考えれぱわずか4人とはいえ女性の反応は予想外に大きかったと言えます。

●中流以上の生活者

 回答者の年齢は40代が56%、次に50代と30代が20%程度。また、プロパーが91%以上で官庁からの出向は5%にすぎませんでした。支持政党を間うたところ「なし」と答えた人が60%近くになりました。

 年収1000万以上の人が36%。社宅住まいの人が47%。持ち家(マンションを含む)の人は40%。平均的サラリーマンに比べ恵まれているのではないでしょうか?

●設立目的は果たしていますが!

 次に、職業意識を問うたところ、働く目的として、「社会貢献」をあげた人がもっとも多く、36%になりました。次が「豊かな生活を送るため」27%。豊かな生活は誰もが望むことですが、大なり小なり税金が使われていることを考えますと、納税者として少々考えてしまいます。

 さていよいよ本論です。民間企業と比べますと、勤務する特殊法人に改善点があると答えた人は、「たくさんある」「多少ある」を合わせますと、67%という高い数字になりました。その一方で「特殊法人の設立目的を果たしていますか」という間いには「十分に」「ほぼ」を合計すると87%の人がYESと答えています。特殊法人の目的を果たすことが第一で、そこでは効率性までは求められないと言うことでしょうか。そのためですか、業務の民間委託を問うた質問には、「大部分」「部分的」を合わせると37%の人が、民間に委託できる業務があるとしています。自らどんどんスリム化してほしいものです。

●総論賛成・各論反対

 また、特殊法人全体を見たとき、統廃合、民営化など、見直しが必要であるとした人が58%いました。ところが自分の勤務先は見直しが必要か問いますと、「必要」を言う人は27%と、一挙にトーンダウン。総論では必要を認めますものの、自分のところは困るという、ホンネの表れでしょうか。

●天下りの問題

 最後に、天下りの問題です。天下りは弊害があるという人は36%いました。その反面「反対」とはっきり答えた人は23%で39%の人は「仕方がないこと」あきらめムードです。所管官庁の支配がいかに現場をスポイルしているかを窺いさせます。

 

 最後になりましたが、アンケートの発送作業の際、休日にも拘わらず参加くださいました会員の皆さんに改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

      松本清司


[国民会計検査院]設立1周年記念シンポジウム開く

 一一税金の無駄使い、特殊法人のあり方に鋭い批判のメス一一

 

 昨年4月19日、永田町の憲政記念館で設立総会を開いた「国民会計検査院運動」が満一周年を迎えた。一周年を記念して、97年4月19日午後2時から東京・千代田区のアルカディア市ケ谷で「リレートーク・シンポジウム」を開き、各分野で活躍中の方々から鋭い問題指摘を頂いた。発言のポイントを紹介したい。(発言順/敬称略)

 

■【石井 紘基】(衆議院議員/国民会計検査院国会議員の会代表)

 昨年来、なぜ私が「国民会計検査院」を関わってきたか。それは中央集権への反発だ。政府系企業のために税金が400兆円も使われ、国の借金は国民一人当たりなんと700万円を超える。私は『日本破産』の本でこんな実態を告発したが、だいぶ国会も世論も変わってきた。「議員の会」には、小杉文部大臣、小泉厚生大臣、伊藤公介国土庁長官、野田聖子郵政政務次官など、現在44人が名を連ねている。

 連休中に私は、ダム問題で地元の村長が全面的な反対運動の先頭に立って活動している四国の木頭村にも行ってきた。自然を破壊してダム建設を行って一体どうするつもりか。今「公共事業コントロール法」の法案作りの準備をしている。今年は国民会計検査院運動の正念場と思う。一緒に手を組んで、改革に取り組んでいきたい。

 

■【渡辺 文学】(国民会計検査院運動事務局長)

 本日のシンポジウムの総合司会を小泉晨一氏にお願いしたい。小泉氏は、残念ながら昨年の総選挙で苦杯をなめたが、再起を期してがんばっておられる。

 

■【小泉 晨一】(地球環境政策研究会代表/前衆議院議員)

 今日は10名の方に報告をお願いしている。順番は司会者の私に一任ということで一番目に原敬一さん、そして上田明さん、新倉俊子さん、高橋利明さん、松原聡さん、紀藤正樹さん、上田きよしさん、ミッキー安川さん、江口克彦さん、猪瀬直樹さんという順番でお願いしたい。秋葉利忠さんは都合がつかず欠席である。

 

■【原 敬一】(葉山の自然を守る会代表)

 山形県白鷹町と長井市の住民で「葉山の自然を守る会」をつくり、全国的に支援を得た。また1995年には、公害問題研究会代表幹事の仲井富氏の働きかけで、首都圏を中心に「大規模林道問題全国ネットワーク」を結成、これがその後の運動に大きな力となった。一方「山を考えるジャーナリストの会」もあり、7人の記者の方がペンのメスを入れ、政官財癒着の構造の中にある無駄な事業の実態を鋭く掘り起こしてくれた。昨年12月、白鷹町の町長が大規模林道の工事断念を議会で表明、林野庁も今年度以降休止すると表明した。しかし自民党の族議員が巻き返しを図っている。

 今年は憲法が施行されて50年になるが、基本的人権が保障されていない。地元で大規模林道反対を言えば、徹底的に弾圧される。佐高信さんは市民オンブズマンや他の様々な運動は「平成の自由民権運動だ」と述べているが、その通りと思う。

 ブナの原生林・自然林の水のおかげで、私たちの命と文化が培われてきた。正に今「ブナ帯からの反撃」である。災害誘発だけの大規模林道工事は許せない。今年8月23・24日の両日、富山で第5回の全国集会が開催される。ぜひご参加いただきたい。

 

■【上田 明】(環境行政改革フォーラム)

 情報公開運動に関わっている。かねてより、議員の海外視察が非常に多いと思っていたが、区議会で報告書を見ると、感想文程度のものだ。渋谷区を例にとると、費用は一人百万円。他の区にもあたってみたが、だいたい似たようなことをやっている。


 それで、せめてその予算の半分位はゴミ問題の研究に使ったらどうかと申し入れたが一顧だにされない。あい変わらず海外”視察”を続けている。そこで考え直してもらう意味で、現在訴訟を起こしている。さらに東京都の監査も調べてみた。ところが、都は百%棄却もしくは却下で、一つとして監査が取り上げられていない。例えば、都議会の控え室のパーティシ∃ン(間仕切り)変更に1億6千万円も使っている。これは無駄使いであると監査請求を行って裁判まで提訴した方がいるが、敗訴している。その後また選挙があり、会派の変更があったが、また1億6千万円の予算要求がある。その他、水質検査に関わる家庭のタンクの問題があるが、これを義務づけようとしている。国も自治休も情報公開によって、税金の無駄使いをチェックすべきだ。

 

■【新倉 俊子】(公共事業チェックを求めるNGO事務局)

 私は、長良川河口堰の反対運動に取り組んで9年になる。私たちが痛感したことは20年、30年前に計画された公共事業が、社会的・経済的な環境が変わって当初の目的が失われても、なおまだその計画が生き続けていることだ。この国には、公共事業を見直したり中止したりするシステムが存在しない。そこで私たちは「公共事業のチェックを求めるNGOの会」を設立した。この会には339団体が加盟している。

 一方国会には超党派の議員で構成する「公共事業チェックを実現する議員の会」があり、法律家、ジャーナリストなどの協力を得て「公共事業を官僚の手から国会、国民の手に取り戻す公共事業コントロール法」を作った。NGOの会も国民会計検査院運動も、同時期の活動提起だが偶然ではない。時代がこのような運動を求めている。この二つの運動が機能してこそ、税金の無駄遣いと官僚の暴走を正すことができる。

 

■【高橋 利明】(弁護士/全国市民オンブズマン連絡会議代表幹事)

 私たち市民オンブズマンの運動は、3年前、94年の7月に始まった。この2年間は「カラ出張」問題、食料費・自治体職員の旅費の情報公開など、隠された実態を明らかにしてきた。今年は、公共事業の入札関係の情報公開請求を行った。さらに都道府県議員の海外旅行関係の情報公開請求も準備中だ。「食料費」は、官官接待が問題だが、よく調べてみると、自治体の職員が官僚の名をかたり自分たちで飲み食いしていた。カラ出張の問題では、自治体を監査すべき監査事務局を追及してみたところ、まったく同じことをやっている。警察官が泥棒をやっているようなものだ(笑い)。カラ接待、カラ出張など95年以前の予算と、今年の予算では300億が120億になっている。このように、自治休で不正経理があるのに地方議会は何をやっているのか。これからも情報公開制度を生かして、いろいろなことをやっていきたい。

 

■【松原 聡】(東洋大学教授〉

 「特殊法人もどき」が実は多い。その一つが認可法人で、私たちの眼に触れることがない。これが今88法人もある。例えば日銀、日本下水道事業団もそうだ。国が設立して、財投からも資金が入っている。でも私たちはその実態が全くわからない。

 特殊法人については『特殊法人総覧』という本が毎年出ており、総務庁が審査している。しかし88の認可法人は、そのリストさえ入手困難で、さらに公益法人がある。これは2万何千あるから、全部というのは大変だ。「指定法人」というのもある。具体的には「日本ガス機器検査協会」という財団法人。ガス事業法の中で湯沸器、ガス風呂などの検査はここがやる、と法律で指定している。その検査料、検定料は通産省が決めている。通産省はその検査料を高めに設定しているから、非営利なのに儲けがどんどん出てしまう。この指定法人数は135。政府から金が流れ、そして権限があり天下りもあろう。特殊法人と似たものは310もある。だから最低限網の目をそこまで広げて追及しないと、どんどん抜け落ちていく。『特殊法人総覧』には、88の特殊法人だけでなく310の認可法人、指定法人も網羅すべきだ。2番目の問題は、今首相に提出されている行革委が出した情報公開法の要綱だが、そこには特殊法人が入っていない。動燃の事故の例をみても、これは問題である。この二つが重要課題である。

 


■【紀藤 正樹】(弁護士/日本弁護士連合会消費者問題対策委員)

 オレンジ共済事件に係る友部達夫議員の責任追及では、新進党が個人的な責任に矮小化させているように思える。なぜ友部達夫が国会議員になれたかということと、国会がなぜ同議員を糾弾していったかの二つのベクトルをはっきりさせないと、この事件については前向きな議論ができないと思う。

 これからの政党は市民参加型の政党を目指している。市民参加型というためには、企業献金を廃止して多くの市民からお金を集めてそれを使う。そうなると個人の意見が政党に集約され、結果的に国が良くなる。個人献金問題というのは、まさしく消費者問題を政治に持ち込む理屈である。そこで重要なのは「情報公開」だ。金を出す以上「情報を公開してくれ」というのは当然である。この点に関しては、住民は自治体に対しては自由に財政監査について訴訟を提起できる。ところが国に対しては住民訴訟が起こせない結果、全ては会計検査院ないし国会議員が秘密を暴いて国会に提示しなければ、実際上、公益法人や特殊法人の問題は改善されないようになっている。国に対しても住民訴訟が起こせるようにすべきだ。

 最後に「規制緩和」「規制緩和」と言っているが、大事な規制はすべきである。会計検査院などはもっと強くならなければいけない。それから国民生活センターにはアメリカのFTC(連邦取引委員会)のように、何か問題があれば立ち入り調査ができるような権限を与えなければいけない。

 

■【上田 きよし】(衆議院議員)

 私は、決算委員会の理事をやっているが、ほとんど時間をとって審議していない。初めて予備費の審査をやったが、やっと平成6年と7年分を審議した。今度決算の7年分をやる。本当ならば1年前の決算をよく審議して、その反省の上にたって次の予算を組むというのが一番いいわけである。しかし2年も遅れているのだ。一般会計で去年レベルでは75兆だと。今年78兆だが、しかし特別会計では260兆ぐらいある。一般会計の中から特別会計の方に40兆くらい打ち込む。そしてこっちから入れる。入れたり出したりしてわけがわからない。要するに詐欺師の手口であるから(笑い)、こんな日本の会計システムは、もっとすっきりさせる必要がある。

 情報公開の問題では、例えば食量費の問題でも、罰則規定がない。訓告、戒告、厳重注意など痛くもかゆくもない。本来なら私文書偽造で懲役1年だし、公共事業に使うべき金を飲み食いに使ったのだから、詐欺・横領罪だ。公務員は定年が早いので、就職口を自分で作っている。整備新幹線も、多くの国会議員が絶対無理だと思っていても、結果的に賛成している。なんとなく全体、大勢で「みんなで決めちゃえばしょうがない」とばかり言っていると日本は本当に滅びる。とにかく無茶苦茶頑張る人を多く作らなければならない。石井紘基さんを先頭に頑張りたい。

 

■【ミッキー安川】(安川 実/パーソナリティー)

 私はタレントであり、難かしいことは分からないが「これだけは言った方がいい」「これだけは守った方がいい」という限界を米国での生活体験から言いたい。

 まず僕が一番苦労したのは人種差別だ。私は何遍も米国の市民権を得るチャンスがあった。グリーンカ一ドもとれた。しかし何か違う。日本にない何かがある。それが嫌いだった。日本には言葉に言い表わせないモラルがあったからだ。

 ところが、日本に帰ってみたらモラルも約束事もいつの間にかなくなっており、米国以下となっていた。

 モラルでは何が大事かと言うと、私たちは何のために生きているかということだ。私たち日本人は自分がない。だから自己主張していた私なんか年中浮いてしまっていた。浮いたおかげでメシが食えますがね(笑い)。今、一番浮いて食っているのが猪瀬さんです(笑い)。

 私は日本のファンを一人でも増やして、この国を良くしてもらいたい。


■【江口 克彦】(PHP研究所副社長)

 国の財政が危機的状態なのに、国民の多くは認識が薄い。2025年には、国の借金が3000兆円と今の6倍になる。なぜそうなるか。一つは高齢化である。医療とか介護がどんどん増える。後は政治の無駄である。国政と地方の政治の効率の悪さを考えなければならない。最大の問題は「中央集権」であり、これは貧しいときのシステムとしては良かったが、豊かな日本では改めなければならない。それから認可法人の問題である。私は、特殊法人全廃論者である。全て民営化を考えた方が良い。もう特殊法人はいらないし、規制もいらない。今、何人かの国会議員が懸命に行財政改革に取り組んでいるが、あまりうまくいかないと考えている。

 第一点目は全体のマトリックス(母体、模型の意)がない。どこで何をしているのかわからない。行政改革会議、財政構造改革会議、政府税調があって自民党の行革推進本部があって、というふうに、おそらく十いくつもそのようなものがあるのではないか。それを政治家や官僚がどこでどのように調整しているのか。

 二点目は本質的な改革への取り組みがない。細かなことをいろいろやっているが、本丸をどう改革するかを考えていかなくてはならない。

 三点目は、政治家も本当の危機感をもっていないのではないか。口ではいろいろ言っている。官僚も言っているが、実際はあまり危機感をもっていない。

 四点目は、子供や孫に対する思いやりが全くない。これは増税や国債を考えるのではなく、とにかく歳出カットすべきである。

 五点目には、日本の国をどのような国にするのか、政治家が誰も言わない。森を見ずに木だけ見ている。このようなことでは行政改革は実現できないと思う。

 最後に感ずるところを申し上げたい。一番目は若い人達に期待したいということ。政治家の60歳以上は引退すべきだ。なぜニュージーランドで行革ができたかというと結局42歳のロンギ首相とダグラスという45歳の大蔵大臣、そして38歳の若手閣僚が計画を立てた。イギリスでもフレア首相は43歳である。クリントンが大統領になったのは46歳。なぜ日本だけが60、70のおじいさんが出てこなければならないか。こういう形では、絶対行革などできるはずがない。

 二番目には、増税をしないことを徹底的に守りぬき、必要な経費は行革で生み出すことを考えて欲しい。私たちが4年かけて研究した成果によると、やり方によれば10年で30兆円削減できる。小さな政府で大きな福祉は可能である。三番目は、国民のレベルが高くなっている今、国民による行政監視機関の設置をどんどん進め、政治家や官僚の通信簿を作って発表して欲しい。

 最後に「財政赤字時計」を作ることを考えてもよいのではないか。今国家財政はこれだけ赤字だ、確かニューヨークでその時計を作ったのではないか。

 いずれにしても私は「行革」というものは、官僚機構の改革と族議員の追放ということにつきるのではないかと思う。

 

■【猪瀬 直樹】(作家)

 ミッキー安川さんと私との共通点は個人で生きていることだ。私たちは究極の自由主義者である。「自分の身は自分で守る」ということ。それは、小さな政府で福祉は可能ということだ。「お上に助けてもらう」という考えを続ければ、どんどん大きな政府になる。僕はたまたま日本国の研究をやったら、税金評論家みたいになってしまったが、新聞がやらないからだ。立花隆さんが『田中角栄研究』をやったとき、新聞記者は「そんなこと知ってる」とうそぶいた。実際はなにもやっていなかった。

 住宅公団の問題で、分譲数を大蔵省の理財局で調べた。空き家率を調べるとたしかに数字はある。だが、建物が完成しても売り出し・入居募集していないから空き家率に入っていない。住宅公団の分析をいくらしてもわからないわけだ。

 大規模林道に反対している原敬一氏に案内されて山に登り、いろいろ調べた。原さんの言っていることも含めて書いた。そうしたら大蔵省の理財局の役人は「そうか」という。「知らなかった」という。当たり前だ。理財局の役人は頭はいいのだろうし


みな悪いことをしているわけではない。正しい数字を見て「あっ、そうか」と言えば決まってしまう。とりあえず、山形の大規模林道はやめることになった。

 財投のお金は郵便貯金から回され、その財投資金をどんどん貸し込むという構造がある。ただ問題は、郵便貯金民営化論というのは怪しい。これは銀行が言っているのだ。銀行は特殊法人である。本当に郵貯が民営化すると銀行は困る。銀行員の給料を半分にしないと、市場社会では対抗できないからである。

 新聞も値段が同じということは、これも特殊法人である。道路公団、住宅公団はわかりやすい特殊法人、銀行と新聞はわかりにくい特殊法人である。何で新聞とテレビが系列になっている必要があるのか。新聞とテレビは別系列にすべきである。テレビは郵政省で認可されているから、新聞は最終的には結局行政に対してきちんとしたアクセスをしない。新聞とテレビが仲が悪かったら、お互いの浄化作用が出てくる。

 メディアは第四の権力である。国会議員は役に立たない。行政はでかすぎる。裁判は20年かかる。そうすると、第四の権力のメディアが大きな役割をもっている。

 ここでもう一つ問題提起をしておきたい。それは「虎ノ門」である。つまり、政治家が「永田町」に居て、官僚が「霞が関」に居て、それに地下茎のようにもう一つ「虎ノ門」がある。特殊法人や社団法人、財団法人など、沢山の公益法人がある。

 森ビルが何であんなに急に増えたかと今思い出してみると、60年代に一気に特殊法人から社団、財団が増えていった。それらの臭いに気がつかなかった。これを第四の権力で追及してもらいたい。新聞の責任は大きい。私は、自分で取材しながら「あっそうか」ということがいっぱいある。それを役人に話をしていくと、みんな一人一人は物分りがいいし良くわかる。基本は真面目である。行財政改革について結局何を言ったかというと「自分のところ以外はみんな正しい」と言っている。(笑い〉

 源泉徴収制度は1940年〈昭和15年〉にできた制度だが、そのとき、サラリーマンは10%か20%くらいで、あとは職人さんや店主やお百姓さんだった。”戦費調達”のために、源泉徴収で給料天引きを決めた。戦後、高度経済成長で8割方サラリーマンになってしまったが、タックス・ペイヤー意識というのは2割しか持っていない。8割のサラリーマンは税金を取られているという意識がない。源泉徴収を見ると所得税と住民税が引かれている。おかしいのは住民税が全国一律ということだ。川崎に行けば安いとか、杉並は高いとか噂があるが、全部根も葉もない噂にすぎない。

 もう一つは固定資産税だ。これは議会を通していない。市町村が勝手に按配している。千葉県は東京の半分だ。では東京が一番高いかというとそうではなく、実は山口県の方が高い。本来固定資産税というものは、地租からきている。それを昭和25年に地方税に切り替えた。それで市町村ごとに按配しているから、どんどん黙って値上げしている。これは議会を通っていないから、われわれが監視できない。こんなおかしなことがあろうか。固定資産税というのはお金持ちだけが払っているように思っているが、これは大間違いで、国民の半分は家を持っている。マンションを含めて、安い家でも高い家でも相当多くの人が払っている。実際にバブルのときの固定資産税が約5兆円ぐらいの収入になっている。今8兆円ぐらいになっている。土地が下がっているのに、なぜ固定資産税が8兆円になっているのか。誰も知らない。

 ついでに言うと、銀行の今の業務純益が7兆円。バブルの時が3兆5千億だから2倍になっている。残りの3兆5千億円は低金利のため、つまりわれわれが3兆5千億円を実質公的資金で入れている。それを銀行は黙っている。だから完全に特殊法人なのである。この銀行の不当利益を、新聞はきちんと調べて書くべきである。

 とにかく日本人はもっと「自分のことは自分で守る」ということにきちんと目を向け、おかしなこと、疑問に思うことは、どんどん追及する姿勢を身につけて欲しい。

 

※最後に会場から3人の方が壇上に立ち、市民の立場から意見表明があり、午後4時半過ぎ終了した。−一[発言要旨紹介(文責)渡辺 文学]


●読売の記事によりますと、参議院で、特殊法人並びに系列の法人に対してNTT並の会計処理とその公開を義務づける法案が可決されたと出ていました。以前国民会計検査院国会議員の会が「公認会計士の八鍬」さんに依頼して、9つの質問を作り、特殊法人に回答を要請致しました。その結果かなり会計処理が不十分だと指摘していた問題です。この通りでしたら、誠に結構なことで、少しでも情報公開が出来れぱと言う思いです。

●アンケート結果は東京新聞10日朝刊、毎日新聞13日朝刊、週刊朝日に掲載されました。

●国民会計検査院の組織拡大が、世話人会で議論されています。会員一人一人が同じ問題意識をお持ちの方に会員依頼をして行くと言うことに落ち着きました。事務局まで同封のチラシを用意していますので必要の方は一報を。またいま、地方では関西と同様に、愛知県、神奈川県と組織作りが進行しております。神奈川県は準備会を6月初旬に、26日結成の会を持つ事になっています。会員には弁護士、公認会計士等専門職の方も参加を予定しております。今後の活躍が期待されます。

●会員名簿要求の方は連絡を!

 

「国民会計検査院国会議員の会」会員名簿

 

秋葉忠利(衆社民)  池田元久(衆民主) 石井紘基(衆民主)

一井淳治(参社民)  伊藤公介(衆自民) 今井 澄(参民主) 

上田清司(衆新進)  枝野幸男(衆民主) 大畠章宏(衆民主)

大脇雅子(参社民)  小川勝也(参民主) 奥村展三(参さきがけ)

海江田万里(衆民主) 金田誠一(衆民主) 管 直人(衆民主)

日下部禧代子(参社民)草川昭三(衆新進)  玄葉光一郎(衆民主)

小泉純一郎(衆自民) 小杉 隆(衆自民) 小平忠正(衆民主)

五島正則(衆民主)  佐藤静雄(衆自民) 佐藤謙一郎(衆民主)

末広真樹子(参無所属)高市早苗(衆自民)  竹村泰子(参民主)

土屋品子(衆21)   田 英夫(参社民) 堂本暁子(参さきがけ)

中尾則幸(参民主)  野田聖子(衆自民) 畑 恵(衆自民)

鳩山由紀夫〈衆民主) 林 芳正(参自民) 船田元(衆21)

古川元久(衆民主)  掘込征雄(衆太陽) 前原誠司(衆民主)

松本 龍(衆民主)  水野誠一(参さきがけ)山元 勉(衆民主)

若松謙維(衆新進)

 

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