金川耳鼻科皮膚科の金川久美副院長が執筆したダイキン工業のHPのコピーです。

美容皮膚科と環境2

健康な皮膚は、すべての有害な外的環境から身体を守るためにあるのです。その健康な皮膚が生まれ変わるサイクルは28日くらいです。全身を被う大切な皮膚の老化は、勿論年齢と共に進んでゆくのですが、促進させる因子として紫外線がとても大きな影響を与えています。紫外線を浴びる事によって体内にフリーラジカル(活性酸素)が生じ、それが皮膚の細胞にダメージを与え老化が進行すると考えられています。この紫外線による老化は「光老化」と呼ばれ、実は皮膚の老化の80%を占めていると言われております。

 

紫外線の破壊力

紫外線は太陽光線に含まれる放射線の一つです。波長の長さにより3種類に分けられ、波長が短いほどエネルギーは強くなります。紫外線を浴びると皮膚の中では細胞のDNAがダメージを受け、皮膚を老化へと導くのです。

 

UV-A(長波長紫外線):

真皮まで届き、細胞を少しずつ破壊してゆきます。その影響はゆっくりと老化として現れます。窓ガラスや雲を透過するので、雨の日や室内にいても安心出来ません。

 

UV-B(中波長紫外線):

主に皮膚の表面の細胞に強いダメージを与えます。短時間で炎症や火膨れを引き起こす事があります。窓ガラスや雲は透過出来ないので室内や日陰で避けることが出来ます。

 

UV-C(短波長紫外線):

通常はオゾン層に吸収され、地表には届きません。近年オゾン層破壊の影響で、オゾンホールに近い国では皮膚ガンの発症率が増加しております。最も強力なエネルギーを持っております。

 

光老化の予防

  1. 紫外線から肌を守る:長袖・長ズボンの着用。帽子・日傘の使用。サングラス(紫外線カットグラス)などの使用。サンスクリーン剤の使用。
  2. フリーラジカルに負けない肌作り:抗酸化物質と言われているビタミンA・ビタミンC・ビタミンEを摂取する。抗酸化物質は、フリーラジカルを抑制・消去し、肌が受けるダメージを最小限にとどめる役割を担っております。

紫外線の豆知識

地表に届く紫外線量は、気温ではありません。太陽の高さに左右されます。ですから、一日の紫外線量の変化は、太陽が南中した12時頃が一番多く地表に届いているのです。また年間の変動は春分を過ぎた頃よりぐいぐい紫外線量が増えているのが現実です。夏場などは、10時頃から2〜3時の外出時は控えられた方がよいでしょう。外出される場合は、十分な紫外線対策をしてお出かけください。また、秋分の頃から紫外線量は徐々に減ってきております。秋の運動会、以外と焼けないでしょう! 10月に日傘をさすなら、4月にさしましょう。勿論10月も日傘をさして頂くのも間違ってはいませんが。

 

皮膚に火傷をしたとき、水ぶくれが出来てしまうことがありますが、それがうまくかさぶたとなってはがれた後、ピンク色のきれいなシミのない肌が出てくる事があります。肌の若返りの為の美容状の手技は、・・どの様にして表面のいたんだ皮膚を取り除き、下から新しいきれいな皮膚を再生させるか・・をいろいろな方法を用いて行っているのです。いくつかの方法を少し細かく説明させて頂きます。

 

ケミカルピーリング

Peel:剥ぐ・剥がす、と言う意味があります。つまりケミカルピーリングとは皮膚に化学物質を塗布して、皮膚の表面の細胞を取り除き、皮膚の再生力を利用して新しいきれいな皮膚にしようとしているのです。歴史は1880年代の後半ころから、ヨーロッパで行われていました。1990年代になってグリコール酸ピーリングが盛んとなってから、日本でも行われるようになってきました。

種類として

  • superficial:グリコール酸・サリチル酸・乳酸ピーリング
  • medium-depth:トリクロール酢酸
  • deep:フェノール

等があり、一つ一つ皮膚を剥ぐ深さも回復までにかかる時間も違います。名古屋の高須クリニックの高須先生がネットで流しているのは、フェノールによるdeep peelingです。日本での主流はグリコール酸による表面の皮膚のみを取り除くピーリングでしょう。あまり赤みも出ず、施術後お化粧をして帰ることができます。ニキビなどは飲み薬では時間がかかるような人にも速効性があり、また皮脂のつまりなどもよく取れますが、定期的に繰り返す必要があります。ニキビの人に使用する薬剤とはPHとか濃度を少し変えますが、肌のくすみなどもかなり改善され透明感のある肌になります。手技としてはやや面倒なのですが、施術前と後では皮膚の性状が変わりますので患者様に非常に説得力があり、私が好む手技の一つです。

 

レーザー療法

レーザー光とは、増幅された単波長の光です。正常な皮膚では、可視光線領域の光を吸収するのは主にメラニンとヘモグロビンです。つまりヘモグロビン(赤)が吸収しやすい波長のレーザー光を用いれば、血管腫などの赤いあざを薄くすることが出来るし、またメラニン(黒)には吸収されるがヘモグロビンには反応しないレーザー光を当てれば黒い部分のみを取り除く事が出来るという理論がもとになっております。

メラニン(シミなど)に使用されるレーザーは、ルビーレーザー・アレキサンドライトレーザー・ヤグレーザーが使われます。赤あざや血管腫・顔面の毛細血管などの赤み(ヘモグロビン)の処理にはダイレーザーが用いられます。脱毛には、日本人の毛は黒いので、ダイオードレーザーやアレキサンドライトレーザーが効果的です。またCO2レーザーは水分に反応するので、小腫瘤の焼灼などに用います。

単波長のレーザー光を取り出すときに、ルビーやアレキサンドライトの石を使ったり、半導体であるダイオードやまたCO2を使うので各々このような名前が付いております。

レーザー療法が出来るようになってから、シミだけではなく太田母班のような黒いあざや単純性血管腫のような赤いあざなどを消す事も可能な時代になりました。ただレーザーは魔法の光ではありません。当てればたちどころに消えるわけではないのです。しばらくその部分を保護したり,皮膚が戻った後も赤みや黒ずみが数ヶ月続く事もあるのです。また限界も有ります。何度試みても取りにくいシミも有れば、現在の機械では難しいあざもあります。このような事を理解して頂いた上で適切に使用すれば、今までどうしようもなかったあざやシミもすべてでは有りませんが、消す事も可能なのです。

 

皮膚と環境

日本人の寿命も長くなりました。いつまでも若々しく元気でいたいと思う気持ちは、どなたも同じでしょう。これはただお顔の皮膚がきれいになったからといって元気になれるものでは有りません。正しい食生活・適度な運動など生活環境も大切です。お部屋の中の環境を整えるのも非常に大事なことでしょう。エアコンの使用により、ドライアイ・ドライマウスなどの問題も起こっております。加湿器なども冬場の空気の乾燥する季節には欠かせないものです。締め切ったお部屋の空気も空気清浄機などで整えてください。気持ちのよい環境の中で元気な若々しい身体、健康な皮膚が生まれてくるのだと思います。

ここではケミカルピーリングとレーザー療法しか説明出来ませんでした。IPLや高周波による治療、コラーゲン・ヒアルロン酸注入療法、ボトックス・ディスポートの皺の治療など言い出したらきりが有りません。5回の予定が一回多くなりました。長いおつきあいありがとうございました。今回で皮膚科は終わらせて頂きます。

著者プロフィール
金川耳鼻科皮膚科副院長
皮膚科
金川 久美
(かながわ ひさみ)
日本皮膚科学会会員
日本臨床皮膚科学会会員
日本美容皮膚科学会会員
本美容外科学会会員
神戸大学医学部卒
兵庫医科大学皮膚科学教室入局

兵庫県宝塚市山本にて
金川耳鼻科皮膚科を開院、現在に至る。

院長 耳鼻科 金川 清人
副院長皮膚科 金川 久美