蕁麻疹とは、かゆみとともに突然、限局性に赤みを伴う膨疹として現れ、数時間後には跡形もなく消えてしまう、一過性、表在性の限局性浮腫です。急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹の区別は、日本では一般的に4週間以上膨疹の出没が持続した場合を慢性としています。また膨疹のでき方から、アレルギー性、非アレルギー性、突発性に分類されています。
蕁麻疹は非常に一般的な病気で、生涯に一度でも蕁麻疹を発症する頻度は人口の12〜25%とのデータもあります。
原因
成人では薬剤(抗生物質、解熱鎮痛剤等)による頻度が高く、小児では食物(豆類、魚介類、卵、イチゴ、トマト、チョコレート、チーズ、ミルク等)、次いで様々な感染症(細菌感染症、ウィルス性感染症、真菌感染症、寄生虫感染症等)の頻度が高いといわれております。原因は多岐にわたりますが、皮膚科を訪れる蕁麻疹患者の約70% で原因がわからないといわれております。またまれにではありますが、全身疾患が原因となる場合もあります。
症状
全身どこにでも生じるかゆみを伴う膨疹です。膨疹の大きさは、直径2〜3mmから、大きくなり環状を呈したり、それらが融合することもあります。個々の膨疹は数分で形成され、30分〜数時間以内に消えていきます。
アレルギー性の蕁麻疹で最も激しい症状はアナフィラキシーショックです。急速な反応で通常は数分以内、遅くても30分以内に生じ、生命の危険を伴います。
治療
原則は
- 原因、悪化因子の除去
- 薬物療法
薬物療法としては、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬がまず使用される薬です。これに症状の重い方には副腎皮質ホルモンが必要になる場合もあります。
最近話題の蕁麻疹として
食物依存性運動誘発蕁麻疹
特定の食物を摂取した後、テニスやランニング等のスポーツをしているときに、蕁麻疹が突然現れ、さらに血管浮腫や全身の潮紅、呼吸困難、腹痛、血圧低下、意識消失等のいわゆるアナフィラキシー症状に陥ることがあります。
運動のみ、あるいは食物摂取のみでは発症せず両方の要素が揃ったときに症状が出現します。またこれにアスピリン等の薬が加わったときに、より症状が出やすくなるといわれております。
ラテックスアレルギー
ゴム製品に触れた場所に、通常接触後5〜20分程度でかゆみ、紅班、膨疹を生じ、原因物質除去後、数時間以内に消退します。しかし症状が局所にとどまらず、しばしば全身性蕁麻疹、鼻炎、結膜炎、気管支喘息を合併し、さらに呼吸困難からアナフィラキシーショックに進行することがあります。
またラテックスアレルギーの患者さんが、栗やバナナ等の果物を食べることで、のどや眼瞼にかゆみを生じ、口唇や顔面のはれ、蕁麻疹、喘息、アナフィラキシー症状を起こすことがあります。これをラテックスフルーツ症候群と呼びます。
口腔アレルギー症候群
リンゴ等の果物を食した時に、口腔の局所症状に始まりアナフィラキシー等の全身症状に発展しうる即時型食物アレルギーのことです。口腔アレルギー症候群は花粉症との関連がみられ、シラカンバ花粉症(同じカバノキ科のオオヤシャブシ、ハンノキ)は、リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、ニンジン等に反応します。
蕁麻疹と環境
このように蕁麻疹にも様々な形があり、また様々な原因があります。アトピー素因を持つ人は、花粉、真菌胞子、動物皮屑、ハウスダスト、タバコの煙などの吸入抗原が蕁麻疹の原因となることもあります。蕁麻疹の治療の第一は原因物質の除去です。上記のような吸入抗原が原因と考えられる方は、エアコンのフィルターの掃除をよく行い、空気清浄機なども使用されるとよいでしょう。