初めまして。今回からは皮膚科が担当させて頂くことになりました。まず皮膚とは、「人体を被い外界との境を形成しております。しかし単なる隔壁ではなく、それ自体生命の保持に絶対不可欠な種々の機能を営む重要な臓器」なのです。その面積は、成人では1.6m2、皮膚の重さは3kg、皮下組織までくわえると9kgで体重の14%にも及ぶと言われております。
多くの方が皮膚を一つの臓器として認識してはいらっしゃらないでしょう。外界の影響を非常に受けやすい臓器ではありますが、生体のホメオスターシスを保つには非常に重要な臓器なのです。また皮膚は全身を覆っているので、頭のてっぺんから足の指先まで、生まれたての赤ちゃんから寝たきりの老人まで、皮膚に異常が出たら皮膚科の対象となるのです。
今回は皮膚科として、とてもありふれた日常的によく見られる疾患を対象にして環境とのかねあいを考えてゆきたいと思います。
湿疹・皮膚炎
まず湿疹とは、…急に皮膚の一部に赤み・痒みが出てきて、そのうちプツプツとふくれてきて、一部に水ぶくれが出来、かいてゆくとかさぶたが出来…これが急性湿疹です。慢性湿疹は、湿疹を長期繰り返す事により、皮膚が肥厚し・乾燥し・苔癬化を起こし、色素沈着や逆に色が白くなる色素脱出を起こしている状態です。この状態を湿疹・皮膚炎と言います。湿疹と皮膚炎との違いは、日本ではほぼ同義語だと考えて頂いてよいでしょう。この中にはとても有名なアトピー性皮膚炎も含まれていますが、次回に説明させていただきます。
●接触性皮膚炎
いわゆる“かぶれ”です。原因としては非常にたくさんあり、たとえば洗剤・石けんを含む化学物質・化粧品・食品・植物・ほこり・衣類の繊維・紙製品であったりします。これらの刺激物が皮膚に触れ、皮膚の許容範囲を超えると湿疹を起こしてきます。またアレルギー性接触性皮膚炎はアレルギー反応を起こし湿疹を引き起こすので、アレルゲンが健康な個体では何ら反応を起こさない微量であっても湿疹を起こしてきます。アレルギーを引き起こす原因となる化学物質は無数にありますが、特に頻度の高いものとして:金属アレルゲン・防腐剤・ヘアダイに入っている毛染料・ゴム製品加工に使う化学物質・ウルシ等です。
また光アレルギー性接触性皮膚炎があります。最近話題になっているのに、湿布薬として使われるケトプロフェンが問題になっております。以前に湿布を貼った場所に紫外線が当たると、赤み・痒み時には水ぶくれが生じてきます。この場合数週間前に使用したものでも症状が出るので注意が必要です。
●脂漏性湿疹
脂漏部位(主に顔・頭・胸骨部・肩甲骨部)に生じる皮膚炎です。新生児〜乳児脂漏性皮膚炎と成人期脂漏性皮膚炎に分類されます。過度のストレス・低温度・低湿度は脂漏性皮膚炎を悪化させる因子でもあります。乳児脂漏性皮膚炎は、一過性で数ヶ月で改善されます。成人期脂性皮膚炎は治療に反応するものの、よく再発します。
●皮脂欠乏性皮膚炎
湿度の下がる冬に多く見られます。高齢者に多く、男性に多い傾向が見られます。皮膚が乾燥しカサカサになってきます。この皮膚は痒みを生じやすく、かく事により皮膚炎が引き起こされ、赤くなりよりかゆくなります。主に両下肢伸側(前面)に見られますが、腰・背中・上肢等にも見られる事があります。
皮膚と環境
このように皮膚は外界の環境から大きく影響を受けます。肌に触れる衣類・寝具等、締め切った部屋の中のダニ・ハウスダスト・カビ・ペットの毛等。これからの季節は窓を閉め切りエアコン等の暖房を使うことにより、外と室内との温度差・湿度差が烈しくなって行きます。エアコンのフィルターはまめに掃除しましょう。部屋に空気清浄機や加湿器をおかれて部屋の中の空気をよい状態に保たれるのもよいでしょう。
入浴はややぬるめの温度がよいと言われています。日本人は40度を超える熱めのお風呂が好きですから気をつけてください。身体を洗うときは、よく石けんを泡立てて、こすらないで優しく洗ってください。あかすりタオル・ナイロンタオル等は、皮膚を傷つけ湿疹の原因にもなります。入浴後肌がカサツク人は保湿剤を使用してください。セラミド入りのよい保湿剤も市販されております。それでも湿疹の出た方は、皮膚科の専門医を受診してください。原因を早く取り除き(出来れば)、適切な薬を使われるのがよいと思います。